「ただの観客で終わりたくない」映像制作集団のCSOとして武器を磨いて仕掛ける理由

CSO・ΛυΛμε.主宰:前原 朋之プロフィール

セレブリックスにてコンサルティングセールスとしてキャリアを開始。マーケティング領域を経て、クリエイティブ部門の立ち上げに携わり、事業・組織・表現を横断した設計に従事。2024年8月、THINGMEDIA株式会社にCSOとして参画し、ゲーム映像部門のビルドを専任。2025年3月には、クリエイティブレーベル「ΛυΛμε.」を主宰として立ち上げ、戦略と表現を接続する立場からレーベル全体を牽引している。

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「人生、真剣に考えた方がいいよ」パートさんの言葉で始まったキャリア

――前原さんは映像業界の出身ではないと伺いました。改めてこれまでのキャリアを教えていただけますか?

前原:

僕はもともと、高校を卒業してすぐに事務所に入ってバンドマンをやっていました。ですが、色々あって一度音楽をやめて放浪していた時期があって。その時に拾ってもらったのがコーヒーショップでした。働いているうちに、ちょうど会社が全国展開を始めるタイミングと重なって。それ以来、新店舗の立ち上げスタッフとして各都道府県を転々とする生活を送ることになりました。

そんな生活を続けていたら、ある時、店舗で一緒に働くパートさんに言われたんですよ。「人生をもうちょっと真剣に考えた方がいいよ」って(笑)。「そうですよね」なんて返したんですけど、その言葉が意外とずっと残っていて。ちょうど地元の神奈川に戻るタイミングも重なり、一度ちゃんと自分の人生を考えてみようと思いました。それまで就職活動なんてしたこともなかったので、「まずは就職活動をしてみよう」というところからのスタートでした。

そこで最初に、転職エージェントに相談しました。高校卒業後すぐに音楽活動を始めていたので、大学にも進学していませんし、一般的なキャリアもありません。「高卒の自分にはどんな仕事があるんですか」というところから相談しました。

紹介されるのは飲食や土木関係などさまざまでしたが、その中で「厳しい仕事ではあるけれど、前原さんならBtoB営業という道も面白いかもしれません」と紹介していただいたのが、前職のセレブリックスです。ちょうど会社が事業を拡大しているタイミングだったこともあり採用していただいて、営業としてのキャリアが始まりました。

ただ、入社当時は本当に何もできませんでした。パソコンは曲作りで使ったり、アルバイトのシフトを組んだりする程度しか触ったことがありません。PowerPointも資料作りも分かりませんでした。「Outlookって何ですか?」「Gmailって何ですか?」というレベルでしたし、ビジネスメールも「お世話になっております」から始めることすら知りませんでした。そんな状態から、本当にゼロから育ててもらいました。

会社としてはちょうど事業が大きく成長しているタイミングでもあったので、早い段階からチームを任せてもらったり、いろいろなプロジェクトに抜擢していただいたりもしました。学歴やこれまでのバックグラウンドではなく、成果を出せばチャンスを与えてくれる会社だったと思います。たくさんの人に支えてもらいながら経験を積んで、成果を出せるようになった過程は、今のキャリアの土台になっています。

「飛び込む」ことだけが武器だった

――全くの未経験から、どのようにしてご自身の強みを磨いていかれたのでしょうか?

前原:

まずは営業としてのOJTです。セレブリックスは研修制度が本当に充実していて、営業の考え方やスキルを座学でしっかり学べる環境がありました。

それに加えて、担当するクライアントが一流企業ばかりだったので、実際に現場で経験を積む機会もすごく多かったんです。座学では理解できていても、実体験としてはまだ身についていないことってたくさんあります。ですが、学んだことをすぐ現場で試せる環境があったので、とにかく場数を踏めました。その積み重ねが、自分を磨いてくれたんだと思います。

その頃に身についた自分の強みがあるとすれば、「まず飛び込んでみること」ですね。もともと失うものがないところからスタートしていたので、とにかく飛び込むしかないという気持ちでした。

もちろん、新しい環境に飛び込めばうまくいくことばかりではありません。ネガティブなこともポジティブなこともあります。ですが、その経験を重ねるうちに、挑戦すること自体への怖さがどんどんなくなっていきました。「やってみること自体に価値がある」という考え方は、この頃に身についたものですね。それは今、シングメディアで仕事をしていてもまったく変わっていません。

前職時代で印象に残っている仕事は、大きく二つあります。

一つ目は、入社して最初に配属された美容領域のプロジェクトです。ある美容サービスの掲載獲得営業を担当していたのですが、競合が非常に強く、僕が配属された頃にはチームもずっと目標未達が続いていたんです。

そんな状況でも、上司だけは最後まで諦めませんでした。メンバーとの向き合い方や鼓舞の仕方、数字の見方まで、本当にいろいろなことを学び、今の自分の仕事に対する考え方や取り組み方の土台は、間違いなくあの頃の上司から教わったものだと思っています。

もう一つ印象に残っているのは、役員の近くで仕事をさせてもらった経験です。複数のプロジェクトを経験したあと、セレブリックスの役員である今井のもとで仕事をする機会をいただきました。実は、この時期にシングメディアと出会うきっかけも生まれています。

今井が求めるレベルは、一つも二つも上でした。求められることも非常に高いですし、誰もやったことがない新しい領域への挑戦を次々に進めていく人でした。その環境で一緒に仕事をして、セレブリックスの中でもまだ誰も経験したことのない領域に挑戦できたことは、自分にとって本当に大きな学びになりました。

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鳥山明さんの死と「他人事」で終わることへの恐怖

――順調にキャリアを積まれていた中で、なぜ「シングメディア」という新しい挑戦を選んだのですか?

前原:

転職を考えるようになった理由は、大きく二つありました。

一つは、セレブリックスという会社自体が変化していったことです。会社が成長するにつれて、少しずつ制約が増えていきました。「本当はやりたいんだけど実現が難しい」という話が増えていったんです。

一緒に働く仲間たちの価値観も少しずつ変わっていったように感じます。もちろん悪いことではないんですが、安定した生活や収入、ワークライフバランスを重視する人が増えていきました。会社として守るものが増えていく中で、自分自身は少しずつ停滞感というか、自分と会社がズレていく感覚を持つようになっていました。

そんな中で転職を考えるようになったんですが、実はきっかけは少し意外な出来事で、漫画家・鳥山明さんの死でした。僕は鳥山明さんが本当に大好きなんです。そんな鳥山さんが亡くなられた時、多くの著名人がSNSで追悼のメッセージを発信していました。僕も同じように大きな影響を受けてきた一人ですが、ふと「自分は結局なんの関係者でもないんだな」と痛感してしまって。

自分が好きなもの、影響を受けてきたものに対して、ずっと「他人事」のままで終わっていくのがすごく嫌だと思ったんです。自分が影響を受けてきた作品の創り手の方々もどんどん高齢化していきますし、このままだと僕はただ見送るだけの人になってしまうな、と。

そこで、今までの営業や事業開発のキャリアを発展させるのではなく、この力を活かしつつも、思いっきり舵を切って、新たな挑戦をしていこうと考え、エンタメに近い領域に飛び込もうと決めました。その中の一社がシングメディアでした。

当時のシングメディアは、大きな挑戦を控えていました。社長の田中さんからその構想を聞いた時に、「面白そうだな」と素直に思えましたし、シングメディアが取引していた既存のクライアントも自分が昔から好きだったゲーム会社ばかりでした。ですから、その人たちと一緒に仕事ができることは、自分が本当にやりたいことに近づけると感じました。

あとこれは余談ですが、実はシングメディアからは、それまでにも何度か声をかけていただいていました。というのも、前職時代に立ち上げた営業イベントのパートナーがシングメディアだったので、かねてから交流があったんです。

当時、役員の今井と一緒に「世の中で一番大きな営業の祭典をつくろう」というプロジェクトがあり、僕も実行委員として参加していました。その時に、シングメディアの田口さんと約3年間、一緒に仕事をする機会があったんです。

そこで見たシングメディアの仕事ぶりが、とても印象に残っています。クライアントが求めるクオリティを実現するためなら、「どうすればできるか」を徹底的に考え抜く。あの手この手を使って期待を超えようとする姿勢が、本当にかっこいいなと思いました。それがシングメディアに対して最初に惹かれた理由です。

その後、田口さんが「田中と佐藤に会わせたい」と会食をセッティングしてくださって、会社のことやこれから挑戦したいことを聞く機会をいただきました。何度か会社にも足を運ぶ中で、「大きな役割で一緒に挑戦してほしい」と声をかけていただきました。あと大きかったのは「前原さんに来てほしい」と、真っ直ぐ言っていただけたことでした。

会社が目指している方向と、自分がこれからやりたいことが重なったタイミングで、「ここで挑戦しよう」と決めました。

セレブリックスの方々にも「応援するよ。」と、快く背中を押して頂けたのも嬉しかったですね。

「ギーク」をブランドに変えるCSOの挑戦

――入社されてからの取り組みやシングメディアへの印象を教えてください。

前原:

シングメディアに入社して最初に感じたのは、「この会社は、自分たちの強みをまだうまく言語化できていないな」ということでした。もちろん、社内では「ゲームに強い」という認識はみんな持っています。ですが、それをお客様に伝える時に、「私たちはこういう会社です」と一言で伝えられるようなコピーや見せ方がまだありませんでした。同時に、「どの領域なら圧倒的に勝てるのか」という整理も必要だと感じていました。

それに、僕が入社を決めた頃と比べても、会社の状況は大きく変わっていました。経営的にも厳しい局面があって、「再来月、この会社って本当にあるんだっけ?」なんて思うような時期もありました(笑)。

だからこそ、まずは会社の強みを整理することが必要でした。

ただ、実際に整理してみると、「この会社はもっといける」と確信できました。可能性を感じたのは、やっぱりゲームを起点とした"ギークさ"でした。正直に言うと、営業会社出身の自分から見て「街のお兄ちゃんたちだな」と思う場面もたくさんありましたし、ビジネスマナーや一般的なお作法という意味では、本当に壊滅的でしたが(笑)。

ですが、その一方で、他の会社にはない圧倒的な強みもありました。それは、「他の人が苦痛に感じることを苦痛だと思わない」ということです。ゲームが好きという人はたくさんいます。ですが、多くは特定のタイトルだけが好きだったりします。

この会社のメンバーは違いました。ゲームという文化そのものが好きで、ジャンルを問わず遊び尽くせる。どんなゲームでも面白さを見つけられる。その感覚は、普通ではありません。

一方で、本人たちにとっては当たり前すぎるので、それを強みだとも思っていないんです。だったら、その特異性をきちんと磨いて、必要としてくれる人たちに届ければいい。見つけてもらえさえすれば、必ず仕事になるはずだと思いました。

そう考えて、自分自身の営業スタイルも完全に変えました。今はCSOという立場ですが、自分の役割は営業を強くすることだけではないと思っています。長期的に見て、「シングメディアといえばこれ」と言える価値をつくる、どちらかというと、ブランドづくりに仕事に近い仕事を行っています。

実績を積み重ねながら、自分たちの強みを誰もが認識できるブランドに変えていくためには3年くらいの時間が必要だと思っていましたし、その考えは入社当初から田中さんにも伝えていました。今も、その途中にいるという感覚です。

一緒に働くメンバーの印象を一言で表すなら、「ピュア」ですね。小学生みたいなピュアさがあります(笑)。

例えば、ゲーム好きと言う人はたくさんいますが、「ゲームなら何でも面白がれる」という人は意外と少ないんです。ですがこの会社のメンバーは、コンシューマーでもスマホゲームでもインディーゲームでも関係なく、ゲームというもの自体を楽しめる。本当に遊び心にあふれた人たちだなと思います。

今、一番手応えを感じているのは、新しいゲーム会社やエンターテインメント企業と出会い、新しく仕事をご一緒できるようになったことです。以前から「ゲームに強い会社」とは言っていましたが、実際には取引先がかなり固定化されていて、正直なところ「そう言っているだけ」という状態もありました。

もちろん、中で働くメンバーの実力は本当に高かったんです。ただ、その価値が外に伝わっていませんでした。おかげで、この2年間で取引先は大きく増えました。以前なら出会えなかったゲームメーカーや企業とも仕事ができるようになってきています。メンバーがもともと持っていた強みを、必要としてくれる人たちへ届けられる環境をつくれている実感が、今の一番の手応えですね。

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準備万端な挑戦なんて人生にはない

――最後に、今後入社を検討している方々へメッセージをお願いします。

前原:

シングメディアの魅力を一つ挙げるとしたら、やはり裁量の大きさだと思います。これは僕がCSOという立場だからという話だからではなくて、プロデューサーにもかなり大きな権限を任せていますし、「まずはやってみよう」という考え方が会社全体にあります。

もちろん、ダメなものはダメと言います。ですがよほどのことがない限り、「挑戦する前に止める」ということはありません。ですから、「本当はこうしたい」という理想があるのに、今いる環境では実現できない。そんなビジョンと現実のギャップを感じている人には、すごく刺さる会社なんじゃないかなと思います。

仕事の進め方も、一般的なプロダクションとは少し違います。依頼された仕事をこなすだけではなく、自分たちで仕事をつくりにいきますし、アイデアを事業として成立させられれば、提案できることに制限はありません。誰かが決めた企画を実行するより、自分たちで企画を持ち込み、自分たちで形にしていくところが面白いところだと思っています。

もう一つ特徴的なのは、プロダクションマネージャーもアウトプットに深く関われることです。制作進行として動くだけではなく、自分の意見が企画やクリエイティブにしっかり反映される環境があります。ですから、「自分がこの作品をつくった」という実感を持ちながら仕事ができる環境だと思います。

一緒に働きたいのは、肩書きよりも「もっとできる」と思っている人です。プロデューサーであれば、大企業の中ではなかなかチャンスをつかめないけれど、本当はもっと挑戦したいと思っている人。プロダクションマネージャーであれば、「言われたものをつくる」のではなく、自分が当事者として作品づくりに関わりたいと思っている人。そういう人と、一緒に仕事をしたいですね。

僕は、優秀さ以上に見ているものがあります。それは、くらいついてくる気概です。熱量を持って一歩目を踏み出せるか。「それ、やります」と自分から手を挙げられるか。当事者意識をもって取り組めるかどうか。

結局、一番大事なのは諦めの悪さなんじゃないかと思っています。最後に、もし今、一歩踏み出せずに悩んでいる人がいるなら、「時間を待たずに来ればいい」と伝えたいです。やりたいと思っていることにも「旬」があります。

「もう少し経験を積んでから」「もう少し準備ができてから」と考える気持ちもよく分かります。ですが、本当に万全な状態で挑戦できるタイミングなんて、たぶんありません。

むしろ、準備が整っていないからこそ挑戦する。その連続が人生なんじゃないかなと思っています。

だから、もし今の環境に違和感があったり、「挑戦したい」という気持ちが少しでもあるなら、その気持ちがあるうちに動いてほしいです。もちろん、それがシングメディアであれば嬉しいですが、何より、「今しかないタイミング」を逃さないでほしいと思っています。

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